裁判所からの「支払督促申立書」が届いてしまったときの対処法

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裁判所からの「支払督促申立書」が届いてしまったときの対処法

ある日、玄関の呼び鈴が鳴り出てみると裁判所からの封筒を手渡されます。身に覚えがある場合ならいざ知らず、事情が分からず開封すると支払督促の文字が。内容を読んでみると、いくら支払えと記載されています。

 

確かにその金額を借りた覚えはあっても、何の事情も訊かれず一方的に裁判所が書面を送付するのかと不安になります。

 

実は督促手続きに関しては、突然郵送されることがあります。ただし慌てる必要はありません。しっかり制度を理解していれば、債務者の言い分を裁判所に伝える手段がありますので、督促手続きの対処法を学んでおきましょう。

 

「支払督促申立書」とはどんな書類?

督促手続きは民事訴訟手続きのひとつです。一般的に知られている民事訴訟は通常訴訟で、権利関係に争いがある場合に訴訟を通して解決を図ります。一方督促手続きはとても手順が簡略化され、要件として金銭やその代わりになる物、株式などの有価証券について債権者に引き渡しなさいという給付判決を得るために用いられます。ですから通常訴訟のように自分の土地に車を止めるなとの不作為請求などはできません。

 

そして督促手続きの特徴は債務者の言い分は訊かず、債権者の主張のみで発せられることです。

 

例えば10万円をAさんに貸しているので支払督促を発してくれと申し立てます。申し立てる先は、債務者の普通裁判籍を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官です。普通裁判籍は、個人であれば通常は住所地になります。

 

支払督促申立書に記載する内容ですが、先ず当事者の表示をします。債権者は誰で債務者は誰という表示です。次に請求の趣旨を記載します。請求の趣旨は、どのような判決を求めるかを意味し、例えば金10万円支払えなど裁判所に命じて欲しい内容のことです。そして、どういった理由でその結論が導き出されるかの原因を記載します。何年何月に金銭を貸したなどです。

 

その他申立手数料や支払督促の送達費用の記載をして裁判所に提出します。請求に根拠があるのかなどは質問されませんし、原則債務者に問い合わせることなく送達されます。債務者にすれば突然送られてくるのですから驚きます。支払督促は特別送達といって、裁判所の名が入った封書で直接手渡しで送られます。

 

普通郵便やハガキで送られることはありません。支払督促には債権者が申立書に記載した内容である当事者の表示や請求の趣旨、原因そして2週間以内に異議を申し立てなければ仮執行宣言をする旨が記載されています。仮執行宣言は放っておくと強制力を持ちます。

 

支払督促申立書を無視するとどうなる?

支払督促の送達を受けた場合に、薄い紙切れだと軽視して放置したままにすれば家財を差し押さえられることがあります。支払督促には仮執行宣言が付されますので、異議を申し立てなければ債務名義となり強制執行する権利が債権者に与えられます。債務名義とは、強制執行によって実現される請求権の存在や範囲が記載された公文書です。

 

つまり債権者が主張する権利を裁判所が認めた証明書のようなものです。

 

裁判所が認めた証明書によって債権者は、債務者の財産に対し請求額の範囲で強制執行できるのです。債務名義の例として、確定判決や訴訟費用や和解費用を定める裁判所書記官の処分、和解調書、調停調書そして仮執行宣言付支払督促があります。支払督促が債務者に送達され異議を申し立てずに2週間経過すれば、その後30日以内に債権者が仮執行宣言を申し立てた場合に債務名義になります。

 

債務名義になると債権者は、債務者がお金を返済しない限り強制執行を申し立てます。強制執行は不動産に行う場合は不動産所在地、銀行預金や給料などの債権を差し押さえるときは債務者の住所地や勤務地、銀行所在地などを管轄する地方裁判所に申し立てます。認められると、債務者へ差押命令が送達されます。したがって、薄い紙切れの支払督促を放置したままにすると差押命令にまで進展する可能性があります。

 

ただし、督促の効力を一部失効させる手続き及び差押命令を回避する対処法が一連の手順の中で何度か存在しますので、それを知っていれば突然支払督促が送達されても慌てる必要はありません。一番やってはならないのが督促を無視することです。裁判所は主張しない権利は認定しませんから、債権者の主張を正当として確定させます。したがって債権者の主張に少しでも疑問を感じた場合には、黙認せずに裁判所へ主張しましょう。

 

支払督促申立書に異議を立てると訴訟へ

債務者へ支払督促が送達された場合の対処法としてその効力を否定するチャンスが2回あります。

 

一度目は最初に督促を受領して2週間以内です。実際支払督促の文面にも、送達の日から2週間以内に督促異議を申し立てないときは、仮執行宣言をする旨の記載があります。督促異議を申し立てるために特別な方式はないので、支払督促を送付した簡易裁判所に対して書面でも口頭でも異議を申し立てれば、異議の限度で支払督促の効力はなくなります。

 

その後どうなるかといえば、通常の訴訟に移行します。移行する時期は、最初に支払督促を申し立てたときになりますので、債権者からすれば二度手間といえます。したがって債務者が督促異議を申し立てる可能性がある場合には、督促手続きの効果はありません。これは仮執行宣言が付される前の督促異議手続きですが、仮執行宣言が付された後でも督促異議手続きが利用できます。

 

督促が届き異議を申し立てずに放置していると、次に債権者の申し立てにより仮執行宣言付支払督促が送達されることがあります。この場合も2週間は督促異議を申し立てることができます。これが二度目のチャンスです。

 

今度は仮執行宣言が付された後なので、異議を申し立てても支払督促の効力は失われませんが、通常訴訟に移行します。仮執行宣言前の督促異議と違って一旦債務名義は確定しているので、支払督促を基準にして判決が下されます。請求に理由がなければ請求棄却判決がなされますが、請求に理由があれば支払督促を認可します。

 

このように督促異議には2回のチャンスがあり、いずれも異議を申し立てずに放置すると確定判決と同一の効力を有します。特別送達で支払督促を受け取った場合の対処法として、債権者の主張を全面的に認めるときを除き、2週間以内に必ず裁判所へ異議を申し立てましょう。早い段階で異議を申し立てれば強制執行を回避できます。

 

 

平和的解決の方法とは?

債務者が督促異議を申し立てると通常の訴訟に移行します。支払督促を申し立てたときに通常の訴訟を申し立てたとみなされますので、訴訟手数料などを補正して準備書面を提出します。その後債務者に対し、訴状とともに、期日呼出状と答弁書の催告書が特別送達されます。

 

ここに第一回口頭弁論期日と裁判所の所在地が記載されています。その期日に出廷できるのであれば出廷して話合った方が平和的に解決できるでしょう。

 

通常債権者は一括返済を求めますので、債務者が分割払いにしたいなら出廷する方が良いでしょう。どうしても出廷できないのであれば、裁判所に連絡をすれば期日を変更してくれる可能性があります。期日前に債権者と話し合って和解案に合意しておけば出廷を回避できますが、現実的な対処法とはいえません。債務者が督促異議は申し立てたが、債権者が主張する請求の原因を認め、支払う意思を示せば裁判所は和解勧告を行います。

 

和解勧告がされると、法廷から別室へ移動し司法委員を交えて債権者と債務者が返済計画について話し合います。例えば、毎月2万円なら支払えるなどを定め、支払いが滞った場合は一括返済するといった条項を付します。和解案が成立すると法廷へ戻り司法委員が裁判官へ成立内容を伝えます。その場で裁判官が正式に和解を認め、公文書である和解調書が作成されます。

 

督促手続きを利用した時点で債権者は債務者の財産状況を詳細に把握しているわけではないので、債務者が誠意をもって支払ってくれる方がいいのです。債務者の側でも給料などが差押えられるより自分の意思で決まった額を返済する方が負担が少なくて賢明な対処法といえます。裁判所も和解による解決を望む傾向があります。身に覚えがない請求や時効など債権者の請求自体に疑義が無い限り、話し合うことが平和的な解決には必要です。

 

差押さえのルールとは?

債務者が督促異議を申し立てず、債権者による仮執行宣言付支払督促が認められると強制執行する手続きが開始します。強制執行が開始すると債務者が取り得る対処法は、返済するか訴訟で争う他なくなります。どうせ財産はないと債務者が開き直った場合でも、給料が差し押さえられることがあります。それでは生活が成り立ちません。ただし、差押えできない財産が民事執行法で定められていますので、差押え手続きが開始されたときのせめてもの対処法として学んでおきましょう。

 

給料であれば、原則4分の3は差し押さえられません。年金や生活保護費も個別の法律により差し押さえが禁止されています。差押えが禁止されているから返済義務が無くなるわけではなく、借りた金額までは他の財産等が差し押さえられる可能性があります。

 

その他寝具や建具など生活必需品も差し押さえられません。また債務者が仕事上で所有している動産は、生活費を稼ぐための手段なので原則差押え禁止です。

 

このように借金を返済しない債務者に責任があるとはいえ、何でも差し押さえて良いとすれば却って返済できない事態を招きますし、人権の側面でも問題になるでしょう。債務者の収入が年金の場合における特有の問題もあります。年金は預金口座に振り込まれることが通常で、預金口座を債権者が差し押さえると実質として年金差押えと同様の効力を生じてしまいます

 

こういった状況の対処法として、差押え禁止の範囲の変更を申し立てます。

 

金額によっては認められないこともありますが、債務者から申し立てることができます。ただし、債権者が払い戻しを受けてしまうと返済しろとは命じられません。強制執行による手続きが開始すると法律に詳しくなければ、黙認しがちです。強制執行を受けるおそれがあるときはその対処法を十分に学習し、実際手続きが開始しても主張できる知恵を持ちましょう


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